xRニュース
2024.10.29
MRシミュレーター・ヘッドセットがパイロット訓練を加速!ウクライナ空軍が導入
フライトシミュレーターを手掛ける「Dogfight Boss」と、xRヘッドセットを手掛ける「Varjo」が、パイロットの訓練加速を目指したMR(複合現実)ヘッドセット『F-16シミュレーター』を共同開発、ウクライナ空軍に出荷したと発表しました。これにより、最新シミュレーターでより実戦に近い訓練環境が提供されることとなり、ウクライナ国内での効率的なパイロット育成が可能に。本稿では同シミュレーターの特徴などをお伝えしていきます。
この記事でわかること
- MR(複合現実)ヘッドセット『F-16シミュレーター』について
- シミュレーターを用いたウクライナでの訓練の現状について
MRシミュレーターの登場でパイロット訓練が加速か
ウクライナ空軍が、最新技術を活用した新たなパイロット訓練システムを導入し、戦闘能力の強化を図っています。フィンランドの高性能XRヘッドセットメーカーであるVarjo社と、フライトシミュレーター開発企業Dogfight Boss社が共同で開発した複合現実(MR)シミュレーターが、ウクライナ空軍のF-16パイロット訓練に投入されました。この革新的なシステムにより、パイロットの訓練が加速し、実戦に近い環境でのシミュレーションが可能となります。同シミュレーターの導入は、米国製F-16戦闘機を使用した新たな訓練システムの一環とのこと。ウクライナはNATO加盟国であるデンマークとオランダから最初のF-16を受領し、老朽化したソビエト時代のミグやスホーイ戦闘機を徐々に置き換えていることはすでに報じられている通りです。ベルギーやノルウェーも合わせて60機以上のF-16戦闘機を提供する予定であり、ウクライナ空軍の再編成が進められています。しかしF-16戦闘機の操縦には専門的かつ高度な訓練が必要という大きな問題が。
昨年末、少数のウクライナ人パイロットがアリゾナ州でF-16の訓練を開始したものの、米国や欧州のF-16訓練プログラムには定員の制限があり、結局ウクライナ当局は十分な訓練機会を提供できない状況に直面してしまった事実があります。こうした背景から、Dogfight Boss社とVarjo社は、MRヘッドセットを搭載したF-16 C Viperシミュレーターを開発。ウクライナ空軍の訓練に役立てることを目指したとのことです。同システムは、キーウ(キエフ)の戦闘機パイロット基地に設置され、国内での訓練が可能になったのです。
MRシミュレーターの特長と利点とは
MRシミュレーターは、従来の訓練システムに比べて多くの利点があります。まずパイロットは、物理的な操縦桿やスロットルを操作しながらMRヘッドセットを通じて仮想の飛行空間を体験できます。同時に、ヘッドセットのパススルー機能を利用して実際の計器類を確認することができるため、仮想世界と現実世界をシームレスに結びつけた超リアルな訓練が可能となります。こうした技術によってパイロットは仮想環境で安全に高度な技術を習得できるだけでなく、実機での飛行時間を効率的に補完できるとされています。なおVarjo社のXRヘッドセットは、すでに60以上の防衛関連組織で採用されており、その中には米国陸軍が実施しているバーチャル集団訓練(RVCT)プログラムも含まれているとのこと。RVCTプログラムではアパッチ、チヌーク、ブラックホークヘリコプターの携帯型訓練システムにVarjoのヘッドセットが使用されています。これにより、米陸軍は高い精度でパイロット訓練を行うことができているそうで、同様の技術がウクライナでも活用されるということになるでしょう。
ウクライナでの訓練の現状について
ロシアの侵攻が2022年2月に始まって以来、ウクライナ国内では激しい戦闘が続いています。そうした状況の中でウクライナ空軍は、パイロットの技能維持と訓練を国内で行う必要がありました。しかし従来の訓練環境が限られていることから、MRシミュレーターの導入はその課題を解決するための大きな一歩となる可能性を秘めています。Dogfight Boss社は、MRシミュレーターの初期導入について「非常に好評」であると述べており、協力的な訓練シナリオをサポートするために、さらなるシステムの導入が緊急に必要であると指摘しています。今後、少なくとも8台以上の追加シミュレーターがウクライナ空軍に納入される見込みです。またDogfight Boss社のCEOであるLukas Homola氏は、リンクトインでの投稿で次のように語っています。「EUのF-16パイロット教官の協力を得て、約1年にわたる詳細な微調整と広範囲なテストを経て、ウクライナ初の完全に機能するF-16シミュレーターを提供できることを誇りに思います。このシステムは、我々の技術的な精度と卓越性への取り組みを証明するものです。」
同シミュレーターシステムは、ウクライナが直面しているF-16パイロットの育成における課題に対する、重要な解決策となることが期待されています。ウクライナは今後も、NATO加盟国からの支援を受けながら航空戦力の強化と再編成を進め、ロシアとの戦闘に備えることになります。MR技術を活用した訓練システムの導入は、その戦略の一環として重要な役割を果たすかもしれません。
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