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日立製作所の【現場拡張メタバース】が現場を大改革

日立「現場拡張メタバース」の画像
2023年12月18日、日立製作所はメタバース技術を活用し、現場環境を仮想空間上で再現して産業分野で活用する「現場拡張メタバース」を発表。技術の特徴や革新性、現場作業にどのような影響を与えるのかを解説します。

この記事でわかること

  • 日立「現場拡張メタバース」の特徴
  • 日立「現場拡張メタバース」の活用例
  • 日立「現場拡張メタバース」の市場への影響・展望

日立の「現場拡張メタバース」技術の特徴

※出典:株式会社日立製作所

このたび発表された「現場拡張メタバース」は、現場からの収集したデータをもとに、生成AIを用いて実寸大のデジタルモデルを作り出せる技術。従来のメタバース技術よりも、さらに現実に近い作業環境を再現することが可能といわれています。
メタバースについてはこちらで解説!

現場をリアルタイムに可視化

「現場拡張メタバース」では、メタバース上に再現された現場を、遠隔地にいる関係者がリアルタイムかつ直感的に把握することができます。たとえば、原子力発電所などの複雑な設備なども、メタバース空間に実寸大で映し出すことにより、作業員のより綿密な行動や作業計画を立てやすくなります。

効率的なデータ収集力と分析力を持つ

「作業着型センサー」や「スマートフォンアプリ」などを用いて、現場の作業員や機械・物に関するあらゆるデータを効率的に収集することが可能です。収集・蓄積されたデータはAIを用いて速やかに解析され、必要な情報のみを即座に抽出することも可能です。

簡便なアクセシビリティ・使いやすさ

「現場拡張メタバース」は高額なデジタル機材、特殊機器、専用ソフトウェアのインストールなどを必要とせず、一般的なPCやスマートフォンから簡単にアクセスできます。またデジタル技術に不慣れなユーザーでも容易に操作できる、シンプルなインターフェースを提供しているのも大きな特徴です。

遠隔地とのリアルタイム協働や認識齟齬の予防に

現場と本部など、遠隔地にいるメンバー同士がメタバース内でリアルタイムに情報を共有できるため、その場で協働・的確な指示を出すことができます。また同じ情報をリアルタイムに共有することで、部署やチームが異なる際に懸念される認識の齟齬リスクを低減させ、よりスムーズなプロジェクト進行へと導きます。

技術の継承と人材育成にも大きく寄与

大規模な現場や複雑な現場、危険な現場などをメタバース上に再現することで、リスクやコストを大幅に削減しながら技術を磨くことができます。安全な遠隔地にいながら熟練者の指導のもとで実践的なトレーニングが積めるため、スピーディーな人材育成も可能となります。

日立「現場拡張メタバース」の実用例

※出典:株式会社日立製作所

日立は、「現場拡張メタバース」をさまざまな産業分野での実用例を通じて実証しています。とりわけ、複雑で危険な作業環境や大規模プロジェクトにおいて、その真価を発揮しています。

原子力発電所の実寸大模型移設プロジェクト

日立GEニュークリア・エナジーおよび日立プラントコンストラクションと協力し、原子力発電所の実寸大模型(モックアップ)の移設工事に「現場拡張メタバース」を適用しました。結果、遠隔地の部署間で起こりうる認識の齟齬リスクを減少させ、業務効率の向上を実現。また現場状況をリアルタイムで共有したことにより、迅速かつ正確な意思決定をも可能としました。

多様な産業領域への展開も視野に

日立は、エネルギーや交通などさまざまな産業領域で「現場拡張メタバース」の効果を検証し、現場作業の効率化を通じてグローバルな社会インフラの持続可能な運用と管理を目指しています。

日立「現場拡張メタバース」が市場に与える影響と今後の展望

「現場拡張メタバース」の開発は、産業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させ、すでに市場にも大きな影響を与えています。

  • 現場作業の高効率化:「現場拡張メタバース」により、現場作業の効率化が実現され時間やコストの大幅な節約が可能に。結果として、企業の生産性向上に大きく貢献すると見られています。
  • コミュニケーションの改善:遠隔地のスタッフ間でのリアルタイムにおこなわれる情報共有と協働。これによりプロジェクトの透明性が高まり、認識の齟齬リスクも減少します。
  • 多様な産業への応用:エネルギー、交通、建設、製造などあらゆる産業分野への応用が期待されています。なかでも、複雑なプロジェクトや高度な技術が求められる分野での利用が見込まれます。
  • 持続可能な社会インフラの構築:「現場拡張メタバース」は、デジタル技術を活用した持続可能な社会インフラの構築にも影響を与えます。環境への影響を軽減しつつ、社会の発展を支えることが期待されるでしょう。

まとめ

「現場拡張メタバース」は産業分野での現場作業を効率化する革新的な技術。データを迅速に収集し、AIを用いて解析することで、遠隔地の関係者も現場を直感的に理解できるようにします。

特殊なデジタル機器を必要とせず、Webブラウザを通じて簡単に閲覧できる点は非常に大きな特徴です。すでに原子力発電所の実寸大模型の移設工事にも活用され、業務効率の向上が確認されています。

あらゆる産業分野において、作業効率の向上と情報共有の促進に大きく貢献することが期待されます。